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京都精華大学オープンジュリーNo.3/060721

■2回生(Thomas Dniell、保田、深本先生)

「静」と「動」を基本として、4つの課題を制作。

課題1 マテリアルのコラージュ
    大学構内にある廃物で制作。ジュリーはなし。

課題2 Site investigation
    「賀茂川と高野川の合流地点」又は「木屋町の廃小学校跡地周辺」の敷地を読む。

気温、明るさ?、音、植生等の「静」と「動」ををグループ内で討議の上、
主観的に判断ーまともに調査する時間がないため。
数字を定量化するのは様々の専門分野の研究者によるものでいいが
学生時代にしか行なわない分野でもあるので、経験するのも悪くはないが…。
確かに実際に仕事をする上でも敷地近辺のデータを設計に反映させることは少ない。
せいぜい設計資料集成をじっくり見るぐらいか。
そう思うとOMソーラーのシステムはよくできている。

課題3 Indoor-Outdoor Cafe

上記のどちらかの敷地上にカフェを設計する課題。
何故カフェだったんだろう…???

路地をモチーフにした作品。図書館とカフェのコンプレックス。
「動中有静」をコンセプトとした作品。
河川合流地点に巨大な壁を作り出す案。

カフェという部分に殆ど意味はなし。
内と外の関係性を設計の中でどう活かすか…という課題。
敷地があまりに巨大なため、カフェというスケールとの乖離が激しく
学生にとっても難しい課題になってしまったように感じる。
敷地を読んでその特性を活かすような設計を求められてるはずなのに
いきなり敷地との関係を断ってしまうような案が多い。
芸術系学生はやはり社会や歴史、敷地との関係性なんかには興味はないのか。
「異化」操作も時には力強い表現となりうるが
それも特化した表現をたずさえた建築にしか、異化を肯定的にとらえる言葉は与えられない。
過剰に行くなら在りし日の高松伸。
ミニマムに行くなら安藤忠雄。
この世のほとんどの建築が中途半端な異化操作。
何かしらの関係性と秩序を意識した設計としてほしい。

ただこういった案に対して、先生方の一部が否定的なコメントを残されたことが面白かった。
異化するような指導ばかりされているのかと思っていたから…。

課題4 プランのない家/隈研吾(2006年新建築住宅コンペ)

難しい課題。
学生なのによくこんな課題を解こうとする。
「プランのない」とは設計者自らプランをしなくてもいいようなシステムを提案することなのだろうか。
プランの確定を他者にゆだねようとすることなのか…とかなんとか考えながら
課題の発表が始まる。

とはいうものの、おそらく全員コンペに提出するだろうから
詳述して迷惑になってもいけないから、ここでは感想だけ。

「家のないプラン」の提案があったりなんかして
非常にスマートかつ現代的な回答も多数見受けられた。
みんな形態をつくるのも上手だし、コンセプトのまとめもいい。
プレゼンなんかはボクなんかよりも余程うまい。

機能がないただの彫刻的空間が発表された際、
鈴木先生の「人間は身体の不自由さをもつからこそ、アートではなくて建築になりうる」
というコメントには非常にうなづいてしまう。
ただその一方、磯崎新のつくば文化センター/廃墟のドローイングが頭をかすめてしまうのも事実。
全ての機能が廃墟化したときこそ原初の建築の美しさが建ち現れるのだろう。
昨今の構造表現主義もそんな建築の廃虚化を意識してのことようにも思える。
機能も設備も時代を超えて成立はしない。
ただ我々は現代を生きている。

で、まとめの感想。

建築は確かに芸術である。
新たな空間概念の拡張、美的な空間、造形物の創造…
確かに必要であるし、それがこの大学のこの学科の存在理由になるのかもしれない。
しかしあまりに自己完結的なモノづくりに終止しているようにも見える。
また比喩的であったとしても少なからずメッセージを発信できるような
強度をもたないと芸術的建築としても不合格になる。
そうでないと、それはただの建築遊戯だ。
世界を巻き込むような強度や方法論がないとマスターベーションにしかならない。

今を生きる我々にとって建築は
社会に存在する問題をソリューションしていくためのツールである。
地球温暖化、シックハウス、欠陥住宅、姉歯問題、パロマにシンドラー、アスベスト…
まだまだウサギ小屋といわれる日本の住宅事情。
ヨーロッパでは医者、弁護士、建築家がステータスの高い職業とされるが
それは人間が人間を救うことのできうる職業と理解されているからである。
したがってわれわれの構想する作品には社会的正義が必要とされる。
現代的な視点を見据えた上での職能が必要とされるのだ。

以上おおよそ高松事務所出身者らしくないコメントだけど、
前事務所に対しては反面教師派(天の邪鬼?)なので。
あしからず。


























































































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