OZONE会報誌(O-cube2月号/2001)に寄稿した文書をちょっと転載。
なんの本で読んだのかは覚えていないけど、
イギリスのある町にベティおばさんという、
齢50〜60になるかたが住んでおられるそうだ。
彼女の生活は中古の住宅に引っ越しては、
その家をリフォームし、そして売り払い、
次の住宅を購入してはまたリフォームすることだそうである。
その期間、約一年ぐらいだったろうか。
毎年、住宅購入→引っ越し→リフォーム→住宅売却→住宅購入…、
とここ数年間そういった生活の繰り返しているらしい。
日本人的な感想からいうと、
毎年住宅を買ってさらにはリフォームまでしてしまうとは、
なんて経済的に余裕のあるめぐまれた方なんだということになってしまう。
しかしこのベティおばさん、
実はこの生活が仕事として成り立っているそうなのである。
どういうことかというとイギリスでは中古住宅が投機対象ではなく、
社会資産としての認識が高いことから市場価格が安定している。
したがって、住宅を買い替えるにあたって、
資産が目減りしていくことは考えなくてもよい。
しかし仕事なんだから、売るにあたって売却益を見込まないといけない。
ここでベティおばさんのリフォームセンスがとわれてくるのである。
写真でも彼女の仕事を拝見したことはないので
仕事(作品?なのかなぁ)の善し悪しを論ずることはできないけれど、
毎年売れてしまうのだからベティおばさんの
リフォームハウスに対する需要はそこそこあるのだろうし、
1年間それだけで食っていけるのだからたいしたもんだと思う。
日々、様々な施主の理不尽な要求の前に
多少なりともストレスをかかえて設計をする
自らの立場に置き換えてみるとうらやましい話である。
自己完結的に住宅をつくることに興味をおぼえる反面、
いやいやそれでは社会に対して背をそむけただけで
作品に拡がりや社会的意義も生み出すことが
できないのではと自問自答するも、
こういった価値観が育たなければ、
わが国の明るい生活文化はないのかなと憂鬱な気分にもなる。
大阪,京都,兵庫で戸建て住宅設計/一級建築士事務所 設計組織 Den Nen Architecture